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連載 吉井子の冒険 (3)

作:しみずせい (3)  

  

 政孝は山梨の高校を卒業して、東京に出てきた。初めて一人暮らしを始めた中野に暮らして10年になる。大学を卒業し、大手の広告会社に勤めてから20歳半ばで独立した。顔立ちは目立つ方ではなかったが、まめな性格でけっこう女にはもてた。しかし、吉井子の前には同棲したことも女を家に招いたこともなかった。

 吉井子と初めて出会ったのは、白の美術館だった。昨年の9月9日に開催されたパウル・クレー展で、ひとりの女性から声をかけられた。右手にカゴバッグを抱えて、水色のミニスカートと黒と白のボーダーのタイトなTシャツを着ていた吉井子だった。吉井子は知り合いと勘違いして話しかけたようだったが、途中で気付いてもそんなのはお構いなしにクレーの絵画についてしゃべってきた。政孝は吉井子のしゃべり方に興味を持った。政孝はクレーについてはほとんど全く知らなかったが、吉井子の話を聞いているとずっと昔から知っているような気がしたのが不思議だった。その後、すぐに二人は付き合うようになった。吉井子とは同棲を始めて半年ほど過ぎた。

 

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