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連載 吉井子の冒険 (4)

作:しみずせい (4)

 

 政孝が吉井子と同棲を始めると、友人たちは程度の差はあったがみんなびっくりしたようだった。そろそろ結婚なのかと言ってくる友人やかつての広告会社の同僚も少なからずいた。しかし、それまで息子の親にしてはかなり頻繁に女性関係に口出ししてきた政孝の母親は、同棲してからはぱったりと何も言わなくなった。政孝は母親と1カ月に一度は電話で話していたが、吉井子の話題は全くでなかった。政孝は、なんとなく――特に確信はなかったが――長野に行くならそのついでに母親に会おうかなと考えていた。しかし、今日は吉井子のペースに合わせようと思っていた。だって今日は、吉井子と付き合ってから初めて白の美術館に行くのだから。

 吉井子は帰国子女で、両親はまだタイだかインドネシアのどこかアジアの国に住んでいるらしい。両親のことについてはあまりしゃべらなかった。ただし、年の離れた弟が一人いて吉祥寺に住んでいた。大学の友人とバンドを組んでドラムを担当し、アメリカのちょっと古いロックを日本語に訳して演奏している。吉井子は弟の話をすると、急にお姉さん口調になった。

 

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