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連載 吉井子の冒険 (7)

作:しみずせい (7)

 

 白の美術館は、もともとは大正から昭和にかけて活躍した実業家の私邸であったが、現在は現代美術館となっている。昭和初期に建てられたモダン建築で、白の外観や大胆なアールのかかった壁面が不思議に日本にマッチしている。政孝は、空いている美術館に一人で来るのが好きだった。誰かに合わせて、作品を見るスピードをコントロールするのが苦手だった。気に入った作品はいつまでも見ていたかったのだ。1年前のクレー展は新聞でも宣伝をしていたせいかかなり混んでいるようだった、政孝は人が少ない火曜日の午前中を選んだ。クレーが好きということではなく、テレビで見た白の美術館の建物自体が気になったのだった。そこで、吉井子に出会った。その後、吉井子とは一緒にいろんな美術館に行くようになった。吉井子は、政孝のことなんて考えずにいつも自由気ままに作品を見ているように思えた。政孝も、美術館ではあまり見る時間をあまり気にしていなかった。しかし、二人は気が付くといつも同じの作品のところで合流した。お互いあまりしゃべらなかった。一通り見終わった後に、美術館のカフェで庭を見ながら展覧会についてあれこれ語るのがいつもの流れだった。美術館のカフェスペースが綺麗でおいしいところは、作品の質も高いと政孝は思った。

 白の美術館に入ると、吉井子は入り口の碑出し手の廊下をまっすぐ進んですぐにカフェに向かった。政孝はブレンドコーヒーを頼み、吉井子はアップルタルトを頼んだ。

「ねえ、あそこの作品見える?庭にあるやつ!」と吉井子は言った。

 

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