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連載 吉井子の冒険 (8)

作:しみずせい (8)

 

「どれかな。あの白いキューブのやつかな?」

「その右側だよ、草に隠れているけど」

 政孝は、腰を浮かせて見てみると、低い黒の板状の物体が見えた。「見えた、見えた。あんなの前からあったかな?」

 吉井子は、ブレンドコーヒーにミルクだけ少し入れてから、ひとくち飲んだ。カチリとカップを置く音が響いた。

「あれね、お父さんなの」

「お父さん?」

「お父さんの影を写したものなの。」

 政孝は、吉井子の言いたいことが良く分からなかった。どういうことだろう。お父さんって何か芸術作品を作る人だったのか。お父さんがどう関係しているのだろう。

「近づいてみる?」と吉井子は言った。

 二人は、カフェスペースと庭を繋ぐ細長い扉を開けて、その黒い板の場所に向かって歩いて行った。近づいてみると、思ったより大きな板だった。その横に板と同じ大きさに地面が5センチほど掘り返してある。よく見ると、黒い板には数ミリほどの深さで掘り込みがしてあるのが分かった。三角と四角。その間に文字が見える。

 

― キシ、2030、ヨシコ、2010 ―

 

「これどういう意味?」と政孝は聞いた。

「よくわかんないの、でも、これがお父さんの影」と吉井子は答えた。

 

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