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連載 吉井子の冒険 (12)

作:しみずせい (12)

 

「そうそう...」最初あったときから吉井子の言動には驚かされていたのを思い出して、口元がすこし緩んだ。政孝は、いつか地下室を見てみたいなと思った。「整然と並んだレコードと地下室」と、政孝は美術館の中にある隔離された私的で小さな空間を想像していた。

 

「じゃあ、中の展示を見に行く?」と政孝は聞いた。

「そうだね」とかごバッグをさっと抱えて、吉井子は先を進んでいった。 

 今日の企画展は、若手写真家の作品だった。そして、その若手の写真を比較するようにかつての大物写真家の写真も展示してあった。木村伊兵衛、土門拳、名取洋之助といった日本近代写真の黎明期の写真家の作品だった。彼らの古いスナップ写真と、同じ場所、同じ構図で若手の写真が並べてある。そこには、ほとんど場所の面影を残さない日本の風景の特色が見えるようだった。吉井子は写真には興味を示さずに、どんどん歩いていく。階段をのぼり、二階からさらに狭い階段を抜けて屋上にでた。政孝も、吉井子の後から屋上にでた。屋上にのぼると、白の美術館がすっかり周りの高い建物から取り残されているのが良く分かった。屋上からは、さっきいたカフェも中庭も良く見えた。

「あっ」と政孝は、声を出した。

 

 

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